「何個要る?」と「何個か要る?」
2022年4月9日
英語を教えていると、日本語って本当に難しいなと感じます。そうなんです。難しいのは英語ではなく日本語なんです。(笑)
以下の二文を見比べてください。
あなたはリンゴをいくつか持っていますか?
あなたはリンゴをいくつ持っていますか?
ご覧のようにぱっと見ほぼ同じ文です。違うところは「いくつか」と「いくつ」、つまり「か」の1字が有るか無いかです。
見た目の違いはたったそれだけなのですが、これらの文は大きく意味が異なります。
前者は持っているか持っていないかを聞く質問であり、後者は持っている個数を聞いている質問です。
「あなたはリンゴをいくつか持っていますか?」「はい、持っています。」
この受け答えは全く問題ありませんが、
「あなたはリンゴをいくつ持っていますか?」「はい、持っています。」
これでは受け答えが噛み合っていないのは分かりますよね。
それぞれ英語にするとどうなるかというと、持っているか持っていないかを聞くのは
Do you have any apples?
となり、個数を聞きたい場合は
How many apples do you have?
となります。
英語の方は個数を聞いているのが一目瞭然です。そしてそもそも「Do you」や「Are you」で始まる疑問文はYesかNoかで答える疑問文なので、こちらも期待する答えがYesかNoなのは一目瞭然です。
少し余談になりますが、「何匹」とか「何本」とか「何人」とか余計な単位(助数詞)が要らないのが英語の楽なところです。逆に英語話者が日本語の単位(助数詞)の豊富さを知れば圧倒されることでしょう。
英語を学び始めの頃は、どうしても日本語と英語を結びつけようとしてしまうので、「か」が無いだけで「how many 〜」をつけるって、なんで英語はそんなに難しいんだ!となってしまいます。
気持ちは分かりますが、英語と日本語を直接結びつけるのは実は間違いで、まず概念・意図があり、それに対して英語と日本語をそれぞれ結びつけるのが正しい言語の理解です。
この場合、英語は「YesかNoかを聞く」と「個数を聞く」という根本的に全く意図の違う質問を、額面通り違う方法で表しています。
一方で、この質問意図の違いを「か」たった1文字に背負わせているのが日本語です。この「か」に込められた深い意図をよく理解できたものだなと我ながら感心します。笑
さらに難しいことに、日本語はどっちとも取れるような曖昧な表現が多く、コミュニケーションをとる上では文字を額面通りに読み取るよりも、空気を読む方が重要とさえ言えます。
「あんた、パン何個か要るんか?」「要る。」「何個やの!」
こんな母子の会話が想像できませんか?(笑)
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